医療法人社団 山中胃腸科病院【公式ホームページ】

ブログ

2025/02/11
ああ東京

東京在住時・・・。

地下鉄は便利である一方で、通勤には苦労したなあ。
すし詰め状態の満員電車。あれはつらかった。

銀座にも行ったなあ。日本の一等地。
ふぐのしゃぶしゃぶを堪能した。

築地にも行ったなあ。
海鮮丼を食べた。
近くに国立がんセンター中央病院も眺めた。
商店街も風情を感じた。昭和ってイメージ。

もう一度、行ってみたい。
あの時は、東京を満喫する心の余裕がなかったから。

2025/02/10
(その2)小生の感想

一つ壁を隔てたあちら側とこちら側で、お互いに壁の向こうから聞こえる「変な音」に、同じ頃同じように執着していた。しかし、一方の漱石は自らの死を意識していたが辛うじて生き残り、もう一方の隣人はあっけなく死んでいった。

漱石は、「胡瓜を卸す音」を「大根を卸す音」と想像していた。当たらずとも遠からずであったので、大きな差はないことになる。一方、死んでいった隣人は、「自働革砥の音」を「器械で運動する音」と思い込んで羨ましがっていたので、大きなズレがあったことになる。

医師である以上、ある患者が隣人患者の病状を知りたがる心理はよくわかる。お互いに相手に抱く心理状態は、病状を知っている医師が俯瞰すると、「アイロニー(皮肉)」である。病人の心理状態の奥深さを感じとることができた。

さて、きゅうりの汁(きゅうりの絞り汁やすりおろしたものを含む)である。ほてり(体の火照りや熱感)に対して一定の冷却作用が期待できる。

伝統医学(東洋医学やアーユルヴェーダ)において、きゅうりは「涼性食品」とされ、熱を冷ます作用がある。当時、(がんの)緩和ケアに有効とされていたのであろうか?

皮膚のほてりに対して、すりおろしたきゅうりをパックのように塗ったり、きゅうりのスライスを直接当てたり、きゅうりの汁をコットンに染み込ませてほてった部分に塗ったりする。体内からのクールダウン目的に、きゅうりのジュースを飲んだり、きゅうり入りの水(デトックスウォーター:アンチエイジング?)を摂取したりする。

2025/02/09
(その1)夏目漱石の短編小説「変な音」

「変な音」は、「思い出すことなど」の番外編にあたり、(漱石の)胃腸病院入院中の体験を扱ったものとされる。ちなみに、「思い出すことなど」では、漱石の吐血シーンが生々しく描写されている。

「変な音」は、ある病室にいる患者(漱石)が、他室の患者のたてる異常で敏感な「音」に関心をもつ話である。死にゆく患者と軽快退院してゆく患者の運命的な対照が描かれている。

つまり、生と死の「アイロニー(皮肉)」である。

生死の境を彷徨った漱石は、胃腸病院に2回長期間入院した。

「変な音」は、1回目入院(1910/6/18~7/31)を「上」として、2回目入院(1910/10/11~1911年2/26)を「下」として二つに分けて書かれたものである。

「上」のあらすじ

壁一枚で隔てられた隣室から大根を卸すような妙な音が聞こえて、(漱石は)気になって仕方がない。「それにしても、今頃何の必要があって、隣室で大根卸を拵えているのだか想像が付かない。」と感じていた。看護婦と患者の受け答えも聞こえるにもかかわらず、見当がつかない。

ある日、隣室患者は退院したらしい。(漱石も)後日、退院したが、音に対する好奇の念はすでに頭から消えていた。

「下」のあらすじ

自分(漱石)自身の病状の深刻さゆえに、あの音のことを思い出す余裕もなかった。同じ病棟の患者が続けざまに亡くなり、「3人のうち2人死んで(食道がんと胃がん)、自分だけが生き残ったから、故人に対して気の毒なような気がする」というありさま。

病気はやがて快方に向かい、あの妙な音の聞こえてきた隣室の担当看護婦に、(漱石は)たまたま病棟内で遭遇した。看護婦は先行して、「あの頃、貴方(漱石)の御部屋で時々変な音が致しましたが…」と自分(漱石)に尋ねた。それは、安全剃刀を研ぐための自働革砥の音だった。隣室患者は、「隣人(漱石)は大分快いので朝起きるすぐと、運動をする、その器械の音なんじゃないか羨ましいな」と繰り返しこぼしていた。

自分(漱石)の気にしていた音の正体がやっと判明した。胡瓜を擦る音だった。あの隣室患者の足が火照るので、看護婦が擦り卸した胡瓜の汁で冷やしていた。しかし、退院後まもなく亡くなった。直腸がんだった。

胡瓜の音で他を焦らして死んだ男と、革砥の音を羨ましがらせて快くなった自分(漱石)との相違を、(漱石は)心の中で思い比べた。

2025/02/08
短編小説「老年」

大正3年、芥川龍之介が22歳時に発表した処女作「老年」。
「放蕩と遊芸に人生の大半を使い果たした敗残老人の一側面」を描いた作品である。

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ある雪の降る日、一中節の順講(浄瑠璃のおさらい会)に多くの出席者がいた。その会場(離れの座敷)に、房という隠居老人が目立たぬように下座にぽつんといる。この房(おととし還暦を迎えた男)が主人公である。

房は、15歳から茶屋酒(遊郭)の味をおぼえて、25歳の前厄時に金瓶大黒(遊郭)の若太夫と心中沙汰になったこともあった。まもなく親ゆずりの身上(財産)をすってしまい、三度の食事にも事欠くことになった。そのため、房はわずかな縁つづきから浅草の玉川軒(料理屋)に引きとられた。今やそこの楽隠居の身に収まっていた。

色恋の道に入り遊女と心中事件を起こし、身代をつぶし遊芸も極めた派手な生活歴ももはや過去の話。今や楽隠居の身の上になり、ほぼ人生終わった状態。そのような房の波乱万丈の人生話を聞きたい聴衆もいたようだ。しかし、房はひとり離れの部屋に戻っていった。

そこで、出席者の2人である中洲の大将と小川の旦那が、酒なくして順講はやれないと座敷を抜け出した。一杯やりに離れから母屋の方へ向かった途中、どこからともなく男女の濡れ場を思わせる台詞や音がしてきた。「房さんかな?きっと房だろう!」と、2人はその部屋の障子の隙間から内をそっと覗き見る。房は、なんと白猫を相手に艶めいた端唄の一節を繰り返していた。これを目撃した2人は、顔を見合わせ・・・、長廊下を忍び足で座敷にもどっていく。大将も旦那も房の世界に立ち入ることはできないと悟る。

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プレイボーイもいずれ老いる。盛者必衰。ああ無常。落ちぶれた孤独な老人の一行動ととらえるのが普通であるが、認知症老人を描いた作品としても読むことができる。

認知症治療に回想療法がある。個人の過去の記憶や経験を取り戻し、それを共有することによって感情的な安定感や自己価値を高める効果があるという。

白猫相手に、自身の古き良き派手な時代を語ることによって、自然に老化防止対策をしているのかもしれない。アンチエイジング対策に「恋をする」も含まれているので。

2025/02/07
「問鉄砲」

関ケ原合戦に出てくる小早川秀秋に「問鉄砲」が放たれた。

徳川家康が実行したという通説が崩れ始めている。

大河ドラマ「葵 徳川三代」では、その通りであったが・・・。

通説では、徳川家康が小早川秀秋に対して「問鉄砲」を放ったとされてきた。

最近の研究では、この「問鉄砲」のエピソードが史料に見当たらないことがあげられる。また、他の戦術が採用された可能性も指摘されている。

そのため、真偽が再考されているそうだ。

2025/02/06
あの患者

研修医の頃、胸水の高齢患者が入院した。

胸水穿刺試験をしたら、血胸でした。

一応、出血傾向の検査をしていたら、血友病Aと診断するに至りました。

こんな年齢でも血友病があるんだと学んだのですが、そこで後天性血友病Aという病気を知ることになりました。

確か、第Ⅷ因子活性低下で抗第Ⅷ因子(FⅧ)自己抗体(インヒビター)は陰性だったので、後天性血友病Aではなかったと記憶しています。

ちなみに、後天性血友病A(Acquired Hemophilia A)は通常、血友病を持たない成人が突然、抗第Ⅷ凝固因子(FⅧ)自己抗体(インヒビター)を産生し、出血傾向を引き起こす。免疫異常であるので、自己免疫疾患(膠原病など)や悪性腫瘍(がん)などを持病にもつ患者が多いことも分かっている。

免疫反応を抑えるための免疫抑制療法を行うのが一般的。多くはステロイド剤が用いられるが、重症例やステロイド剤使用例は免疫抑制剤が併用されることも少なくない。

令和6年4月に難病指定されたという。後天性血友病A(Acquired Hemophilia A)は、自己免疫性後天性FVIII/8欠乏症と呼称されている。FVIII/8自己抗体(インヒビター)は、免疫抑制療法によりいったんは寛解することが多いが再燃することも少なくない。FVIII/8自己抗体が残存していることもあり、定期的検査を含む長期の経過観察が必要である。死亡率は2~3割と高く、出血死よりも免疫抑制療法中の感染死が多いので厳重な管理が必要である。

医師としての経験を振り返るのは大切である。
医学はいつの間にか進んでいるから。日進月歩。

謙虚に生きよう。不勉強はいけない。

2025/02/05
ああ東京

思い出す。公人2年。国家公務員。PMDECに勤務していた頃。

虎ノ門界隈。森ビル33だったように思う。その10階が職場。

近くを歩くと、東京タワーをビルの隙間から覗くことができた。

今思えば、貴重な時間だったと思うけど・・・。

あの頃は、医療現場ができなくて寂しい思いをしたなあ。

若い時は遠回りしても、視野を広げる努力は必要だったのだ。

2025/02/04
2025/2/4

血液検査の項目の一つ
Lactate Dehydrogenase(LDH)(=乳酸脱水素酵素)

まれに、LDH1000~2000 U/Lを経験する。重病があることを必ず推測してしまう。決して無視できない。

「LDHはうそをつかない」という格言がある。

臨床現場において、LDHがさまざまな病態の異常を鋭敏に反映することを示した表現らしい。

ちょっと調べてみたが、これと言った具体的な由来を明確に記した文献を見つけることができなかった。

さて、LDHはほぼすべての組織に存在し、細胞障害や組織崩壊が起こると速やかに血中に漏れ出す。そのため、心筋梗塞、肝疾患、腫瘍、血液疾患、感染症など多くの病態で上昇する。

逆に言えば、何らかの異常があればLDHが上昇するため、「異常を見逃さない指標」としての信頼性が高いとされる。

悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫などの血液疾患では、LDHが腫瘍細胞の崩壊や代謝亢進を反映し、予後指標としても使われる。

肺がんや消化器がんなどでも、LDHは腫瘍指標となるため、がん診療においても無視できないマーカーである。

肝障害や溶血性疾患では、(ASTやALTよりも)先にLDHが上昇することがあり、特に溶血の評価に不可欠である。

おおよそ、ALTでは肝臓、ASTでは筋肉および肝臓、CKでは筋肉と、特定の臓器に限られることが多いが、LDHは全身の病態を反映する。

一度上昇すると、その原因を無視できず、精査が必要になるケースが多い。

多くの疾患で異常を示すが、逆に「偽陰性」が少ないため、臨床医が「LDHの上昇を見たら何らかの原因を追求する」という行動をとる習慣が生まれたという。

「LDHはうそをつかない」という表現は、「異常があるときは必ず反応する」という臨床的経験に基づいたものだろう。

2025/02/03
2025/2/3

私は消化器内視鏡専門医です。

一線を退いて、検診中心の胃カメラ(上部消化管内視鏡)をしています。

以前から感じていたのですが、内視鏡で観察される十二指腸乳頭はひとそれぞれで千差万別です。

そこで、個人識別に使えるのでは・・・と思うのです。

十二指腸乳頭の形状は個人差が大きく、位置や開口部の形態、周囲粘膜の隆起などが異なることが知られています。

確かに、指紋や虹彩のように「完全」である必要はないものの、実用的でなければ意味がないでしょう。

内視鏡検査を行わないと観察できないし、定期的に撮影できるわけではないからです。

しかし、弱点があります。

十二指腸乳頭は、加齢だけでなく疾患(炎症や腫瘍など)によっても変化する可能性がありますから。

最終的に、人工知能(AI)に聞いてみました。

その面白さと限界について解説してくれましたが、「理論的には可能性があるが、実用化にはさらなる研究が必要」という段階とのことでした。

2025/02/02
医者の不養生というより医者の不勉強 m(_ _)m

2015年12月25日 文部科学省

食品の栄養成分をまとめた日本食品標準成分表(改訂版)によると、製造に使う釜の多くが鉄製からステンレス製に代わったことで、ヒジキに含まれる鉄分が大幅に減ったという。

この成分表は学校給食の献立づくりや栄養指導などに幅広く使われている。

そこで、表示が大きく変わったのが「鉄分の王様」とも呼ばれるヒジキ。100gあたり55mgあった鉄分が6.2mgと、9分の1になった。ステンレス製の釜が普及し、以前より鉄分が少ないものが流通していることが理由という。

また、切り干し大根もステンレス製包丁の普及を受け、鉄分が9.7mgから3.1mgに減ったという。

10年前のことなのに、情報取集能力のない自分に、喝!!!!

これは、あきらかな恥である。しっかりしろ! 元病態栄養専門医。

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