医療法人社団 山中胃腸科病院【公式ホームページ】

ブログ

2025/10/03
宇宙開発の影① ~成功するとは限らない~

アポロ13号の軌跡 ―「成功した失敗」

1970年4月11日打ち上げ。
目的は人類3回目の月面着陸。
司令船「オデッセイ」と月着陸船「アクエリアス」で構成。

打ち上げ後約56時間、酸素タンク爆発が発生。
原因は酸素タンク内の配線被覆が損傷していたこと。

酸素と電力の喪失により、月面着陸は中止。
月着陸船「アクエリアス」を“救命艇”として使用。約4分の噴射可能。
軌道計算をやり直し、月の重力を利用して(月周回軌道を経由して)帰還ルートに。
管制センター(ヒューストン)の即応力と宇宙飛行士の冷静な対処が大きかった。
エンジン開発者の陰ながらの協力があった。
二酸化炭素上昇に対して、NASAの「シミュレーション訓練」が有効に働いた。

致命的事故を回避し無事帰還できた。

教訓として、冗長性と緊急時の柔軟な資源活用の重要性。「失敗」から安全性向上の手段を学ぶ文化。

2025/10/02
公立病院、8割赤字、過去最大、24年度決算 総務省

2025/9/30(火) 17:00配信 時事通信社

 総務省は30日、全国の公立病院の2024年度決算をまとめた。

 844病院全体の経常収支は3952億円の赤字。赤字だったのは703病院で全体の83.3%を占めた。赤字幅、赤字病院の割合はいずれも過去最大。同省は、人件費の増加や医薬品などの価格高騰で経営状況が悪化しているとみている。

 公立病院の収支は、新型コロナウイルス関連の補助金など国の支援が手厚かった21年度は3256億円の黒字だったが、23年度に赤字に転じた。人件費や材料費の増加が診療収入の伸びを上回り、24年度は赤字幅が1853億円拡大した。

 本業の医業費用を見ると、約半分を占める職員給与費が1374億円増加。国の人事院勧告に伴う賃上げなどが影響した。薬代などの材料費は398億円増えた。

 いよいよ苦境に立たされている。

 原因はわかっている。

 改善できなければ、人件費削減しかない。

 人事院勧告はありがたいが、経営者側は困るのではないか。

 やはり、減給しかないだろう。

 私は構わない。

 その代わり、有給休暇を十分に頂こうとしよう。

2025/10/01
「仁」という文字の本質

 私に名前に「仁」がつく。「仁」とは・・・。

字源と形
 「仁」は、人偏(亻)と「二」から成る。
 これは二人の人間が向き合い、互いに支え合う姿を表す。
 一人では「仁」は生まれず、人と人の間にのみ存在する徳――それが仁。

思想的背景(儒教)
 孔子は『論語』で「仁」を最高の徳目として位置づけた。
 「己の欲せざる所、人に施すことなかれ」
 「仁者は愛人す」(仁とは人を愛すること)
 つまり、「仁」は単なる優しさではなく、自分を律しつつ相手を思いやる高度な人間力。

武士道における仁
 武士道では「仁」は、武力を持つ者が持たねばならない慈悲と公正を意味した。
 強さと優しさが同居する美徳であり、力がある者ほど必要とされる資質。

医療と仁
 医は仁術――これは江戸時代から伝わる言葉。
 医療行為は技術であると同時に、患者を思いやる「仁」の実践でなければならない。
 仁なき医術は、ただの処置で終わる。

現代的なかっこよさ
 「仁」とは温かい理性。
 情に流されず、しかし冷たくもならず、正しさと優しさの均衡を保つ力。
 それは一朝一夕では身につかず、生涯を通じて磨かれるもの。

2025/09/30
プラスチック脳障害の最新知見 ~マイクロ・ナノプラスチックが脳に蓄積~

 2025年2月3日付けの「Nature Medicine」掲載の研究によると、環境中に広がる微小なプラスチック粒子(マイクロプラスチックやナノプラスチック:1~1000ナノメートル)が、人間の脳に高濃度で蓄積していることが明らかになった。この濃度は、肝臓や腎臓よりも脳の方がはるかに高かった。脳に蓄積されるプラスチック粒子の大半はポリエチレンで、主にナノサイズの「かけら」として存在。2024年のサンプルでは、2016年と比べて脳内プラスチック粒子濃度が約50%増加していた。これは、近年急激に増加している環境中のマイクロ・ナノプラスチックの影響と考えられる。

認知症患者の脳ではさらに高濃度
 同研究では、認知症(アルツハイマー病や血管性認知症など)と診断された人の脳を調べた結果、通常の脳と比べてプラスチック粒子の濃度が大幅に高く、最大で標準の脳の7~30倍に達していた。これらの粒子は血管壁や免疫細胞に多く存在しており、脳の障害や免疫システムへの影響の可能性が指摘されている。

プラスチックと脳障害の因果関係
 重要なのは、現時点で「プラスチック粒子が認知症などの脳障害を引き起こす」と直接証明されたわけではないこと。研究で得られたのは関連性であり、因果関係の有無やメカニズムについては今後の大規模かつ長期的な追跡研究や動物実験が必要。

まとめ

  • 環境中のマイクロ・ナノプラスチックは、肝臓や腎臓よりも脳に多く蓄積される事実。
  • この傾向は近年さらに強まっており、認知症患者の脳では極めて高濃度。
  • プラスチック粒子が直接脳障害や認知症を引き起こすかどうかは不明。
  • 暴露経路や蓄積・排除メカニズム、健康影響の解明が急がれる課題。

プラスチックの脳蓄積と健康との関係は、今後ますます注目される???

2025/09/29
二重被爆者

 かつて耳にしたことがある。

 確か、2回被爆した男性。広島で被爆し、長崎に逃げていたらまた被爆。

 同じような人が存在した。その記事を見かけた。

・・・当時14歳だった福井絹代さん(現在94歳:青森在住)は、広島で2歳下の弟と被爆し、3日後、親戚を頼り避難した長崎で入市被爆した。1945年8月6日、爆心地から約1.8キロの自宅にいた。中庭に出ようとした瞬間、「ピカーっと光って2階建ての家の下敷きになった」。そんなさなか、無料で汽車に乗れることを知った。「今動かないと暮らしていけない」。父方の親戚を頼ろうと、出身地の長崎へ行く決断をした。ところが、同9日午後。到着した長崎市内では、線路伝いに多くの人や馬が倒れて死んでいた。「とにかく、隙間なく人が倒れていた」。謝りながら人や馬の上を歩いた。・・・

不運が重なる残酷な状況。想像を絶する。酷過ぎる。
核の平和利用だけを切望する。

2025/09/28
命がけのスポーツ・ボクシング

相次ぐ訃報・・・(2025年8月)2日に行われたプロボクシングの日本ライト級挑戦者決定戦に臨んだ後に救急搬送され、開頭手術を受けていた同級4位浦川大将さん(帝拳)が9日午後10時31分、死去した。28歳だった。試合後に担架で運ばれ、医務室では意識があった。念のために都内の病院に救急搬送されていた途中で意識を失い、急性硬膜下血腫のために開頭手術を受けた・・・。

ご冥福をお祈りします。
ボクシング好きの小生。
危険を伴うスポーツは他にもある。
万事うまくいって欲しい。

2025/09/27
Memento mori(メメント・モリ)

 ラテン語で「死を忘れるな」という意味。

 中世ヨーロッパからルネサンス期にかけて広く使われた警句。

 「いずれ死ぬ身であることを意識し、今を正しく生きよ」という人生訓。

 キリスト教世界では、死を神との最終的な出会いとして捉え、贅沢や傲慢を戒め、謙虚な生き方を促す標語として広まる。美術や文学では、骸骨・砂時計・枯れた花など「死の象徴」を通じて表現されることが多い。

 人生のはかなさを認識し、現在の瞬間を大切にすることを促す教え。中世ヨーロッパでは、修道士たちが日々の生活の中で死を意識し、霊的な成長を促すために用いられた。

 古代ローマから現代に至るまで、様々な人々にインスピレーションを与え、思想や芸術作品にも強く影響を与えている。

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本居宣長との関係性
 本居宣長(1730–1801)は江戸時代の国学者で松坂の町医者。
 彼の思想や著作の中に、「死を自覚し、日々を真摯に生きる」視点が垣間見られる。

死生観の共通性
 宣長は『玉勝間』などで、人の命のはかなさや無常感を繰り返し述べた。特に、病人を診る医師として、死の不可避性を日常的に感じ、それを受け入れる姿勢を説いた。

もののあはれとのつながり
 宣長の美学「もののあはれ」は、人生や自然のうつろいに感じ入る心。死や別れも「もののあはれ」を深く感じさせる契機であり、これはMemento mori的な死の意識と響き合う。

行動への転化
 宣長は死の意識を単なる恐怖や諦めで終わらせず、「今を正直に、和やかに生きる」方向に導いた。西洋のMemento moriが宗教的救済へ向かう傾向があるのに対し、宣長は日本的情緒と倫理観を通して日常の心がけに落とし込んだ。

2025/09/26
松坂城址、本居宣長記念館、そして多気VISONへ
〜歴史と現代が交差する一日〜 連載③

さて、歴史にじっくりと触れたあとは、車で少し移動して、近年注目を集めている大型複合施設「VISON(ヴィソン)」へ。松阪市の隣、多気町の山間に広がるこの施設は、食、癒し、文化、アートが融合する“体験型リゾート”だ。
歴史の静けさから一転、ここは活気に満ちていた。

まずは、腹ごしらえ。飲食店が軒を連ねる「和ヴィソン」エリアで、地元食材をふんだんに使ったランチをいただいた。素材の良さが際立ち、観光地価格を感じさせない満足度の高さだった。

食後は、スイーツ巡り。暑さの中、つい引き寄せられるのは冷たいコーヒージェラートやスイーツ。VISONの魅力は、どこか都会の商業施設とは違い、“その場で作られているもの”の臨場感があること。食べ歩きしながら、まるでひとつの町を探検しているかのような楽しさがあった。
しかし、真夏の午後。炎天下の中を歩き続けるのは、なかなか過酷だった。汗をかきながらも、地元産の炭酸水や塩飴でなんとかエネルギーを補給し、時おり木陰で一息つきながら、最後までVISONを満喫した。
夕方、帰路につく車中で、ふと今日一日を思い返した。戦国の城と、江戸の知識人の足跡、そして現代のにぎわいと食の宝庫。すべてがわずか数キロ圏内で味わえる松阪・多気エリアの懐の深さに驚かされた。
「歴史を学ぶ」ことと「今を楽しむ」ことは、決して別のことではない。過去を知ることで現在が豊かになり、今の体験がまた、未来の思い出を形づくる。
松坂城址、本居宣長記念館、そして多気VISON。すべてが一続きの“心の旅”だった。

2025/09/25
松坂城址、本居宣長記念館、そして多気VISONへ
〜歴史と現代が交差する一日〜 連載②

城址から下ってすぐの場所にあるのが、「本居宣長記念館」だ。江戸中期の国学者・本居宣長は、松阪の町医者でありながら、『古事記伝』などの大著を著した知の巨人。

館内には、宣長の自筆の原稿や書簡、和歌、生活道具などが整然と展示されており、彼の思索の深さや誠実な人柄が伝わってきた。
敷地内に保存された旧宅「鈴屋(すずのや)」は質素ながらも気品があり、今にも宣長が机に向かって筆をとる姿が目に浮かんだ。

江戸時代の国学者として名高い宣長は、この地に生まれ、生涯をかけて『古事記』や『源氏物語』を読み解いた。自宅兼診療所「鈴屋」にて、町医者として生計を立てつつ、夜な夜な机に向かって筆を走らせたという。記念館に併設された鈴屋を訪ねると、こぢんまりとした部屋に書物と硯、灯りが再現されており、当時の生活がまざまざと感じられる。宣長が唱えた「もののあはれ」の思想には、人の心の機微を丁寧にくみ取ろうとする優しさが滲む。学問とは、ただ知識を積むことではなく、人の本質に近づく営みである──そんな静かなメッセージが、この松阪の一角から今も発せられているように思えた。

2025/09/24
松坂城址、本居宣長記念館、そして多気VISONへ
〜歴史と現代が交差する一日〜 連載①

三重県松阪市──この町には、歴史の重みと現代の息吹が不思議と調和している。
今回の旅は、松坂城址と本居宣長記念館、そして今話題の大型複合施設・多気VISON(ヴィソン)を巡る一日。
歴史と文化、そして食と癒しをたっぷり味わうことができた、記憶に残る旅となった。
朝、松阪インターから降り立つと、空は夏らしい澄んだ青空。強い日差しの下、まずは松坂城址を目指した。緑に包まれた高台に立派な石垣が見えてくる。かつて蒲生氏郷が築いたこの城は、天守こそ現存しないが、石垣の威容には見ごたえがあった。

本丸跡に登ると、眼下に松阪の町並み、遠くには伊勢湾のきらめきが見渡せた。蝉の声が降り注ぎ、石垣の間から吹き抜ける風が心地よい。往時を偲びながらしばし腰を下ろすと、時の流れが静かに心を洗ってくれるようだった。

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