医療法人社団 山中胃腸科病院【公式ホームページ】

「正義中毒という名の医療倫理」

 医療現場には、「患者のため」という旗印のもとに燃える“正義中毒”が潜む。

 中野信子氏は、人が正義を語るとき、脳内で快楽物質ドーパミンが放出されると述べている。つまり、「正義」は人を酔わせる麻薬でもあるのだ。

 「倫理的に正しい医療」を貫くつもりが、いつしか他者を断罪するための道具に変わる。ガイドライン違反を見つけては声を荒げ、同僚を叱責しながら自分の“善”を確認する。そこに対話も共感もない。

 倫理とは、本来「共に考えるための知恵」である。にもかかわらず、正義中毒に陥ると「勝ち負け」の倫理にすり替わる。医療者に必要なのは、正義ではなく迷いを許す倫理である。

 白衣の中の熱が冷めたとき、ようやく本当の思いやりが顔を出す。

 医療現場最優先主義の小生であったが、いよいよ終点に近づいている。

 医師とは何か?

 医療とは何か?

 そして、医者とは何か?

 もうわからなくなった。

 一度、この世界から少し外れて生きよう。

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