Memento mori(メメント・モリ)
ラテン語で「死を忘れるな」という意味。
中世ヨーロッパからルネサンス期にかけて広く使われた警句。
「いずれ死ぬ身であることを意識し、今を正しく生きよ」という人生訓。
キリスト教世界では、死を神との最終的な出会いとして捉え、贅沢や傲慢を戒め、謙虚な生き方を促す標語として広まる。美術や文学では、骸骨・砂時計・枯れた花など「死の象徴」を通じて表現されることが多い。
人生のはかなさを認識し、現在の瞬間を大切にすることを促す教え。中世ヨーロッパでは、修道士たちが日々の生活の中で死を意識し、霊的な成長を促すために用いられた。
古代ローマから現代に至るまで、様々な人々にインスピレーションを与え、思想や芸術作品にも強く影響を与えている。
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本居宣長との関係性
本居宣長(1730–1801)は江戸時代の国学者で松坂の町医者。
彼の思想や著作の中に、「死を自覚し、日々を真摯に生きる」視点が垣間見られる。
死生観の共通性
宣長は『玉勝間』などで、人の命のはかなさや無常感を繰り返し述べた。特に、病人を診る医師として、死の不可避性を日常的に感じ、それを受け入れる姿勢を説いた。
もののあはれとのつながり
宣長の美学「もののあはれ」は、人生や自然のうつろいに感じ入る心。死や別れも「もののあはれ」を深く感じさせる契機であり、これはMemento mori的な死の意識と響き合う。
行動への転化
宣長は死の意識を単なる恐怖や諦めで終わらせず、「今を正直に、和やかに生きる」方向に導いた。西洋のMemento moriが宗教的救済へ向かう傾向があるのに対し、宣長は日本的情緒と倫理観を通して日常の心がけに落とし込んだ。