山崎豊子原作「沈まぬ太陽」
1985年に起きた日航ジャンボ機墜落事故をモデルに、航空会社で勤務する二人の男性(恩地と行天)の対照的な人生が描かれている。
恩地はかつて「国民航空」の労組委員長として経営陣と激しく対立したがために、パキスタン・カラチ・イラン・テヘラン・ケニア・ナイロビと転勤を命じられ、10年にも及ぶ流刑のごとき処遇を受けた。そのためか、恩地は転勤先で飲酒がエスカレートした。
一方、労組で恩地の右腕でより現実主義的の行天は、経営陣に将来を見込まれた。幾多の汚れ役を引き受けつつ、出世コースを邁進した。途中、組合運動で指導力を発揮した人望厚き恩地を排除した。
二人の対立が深まっていく。
二人の勝敗について語りたくないが、醜い権力争いに巻き込まれたくないという気持ちが湧いてきた。
恩地はニューヨークの動物園で、檻の中の鏡に自分の姿を見た際、「この世で最も危険な動物(=ヒト)」という一面に気づく。
人類の歴史で繰り返されてきた戦争・闘争。
恐らく、多くの男性の持つ攻撃性を徹底的に吐き出し、人類社会が次のプロセスへ進むための準備作業であったことに気づく。