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2023/8/15 ブログ

「門」の語りの続きです。

あらすじ④
 ビビりながら、宗助は座禅から帰ってきた。御米の話によると、安井が来ていたことを知らなかったようだ。坂井に聞くと、弟と安井の2人はすでにモンゴルに帰って、しばらく戻らないとのことであった。宗助はひとまず安堵した。そして、坂井が「小六をうちに置いてやる」と運よく引き受けてくれた。さらに運よく、宗助は役所で昇進することになった。
 「本当にありがたいわね。ようやくのこと春になって」と喜ぶ御米に対して、宗助は「うん、でもまたじきに冬になるよ」と下を向きながら答えた。

 宗助と御米が安井と会わずに済んだこと、坂井が実弟の小六の面倒を見てくれること、宗助が昇進したことなど、幸運に恵まれたことはよかったことだろう。しかし、宗助は「じきに冬が来る」と悲観的である一方、御米は「春が来た」と楽観的に喜びを露わにしている。これからの夫婦の未来は、安井の存在が見え隠れする以上、明るいとは言えないだろう。占い師の言葉が最後まで気になってしまう。宗助は気がかりであろう。

 蛇足ながら、最後のほう失速してるよ。夏目漱石さま。うわさによると、持病が芳しくなかったようで・・・。三部作の「三四郎」→「それから」→「門」と順番に読めば、連続性が何となく伺われる。まず、田舎から上京する三四郎の恋愛に対する未熟さ。「三四郎」のそれからとして、「それから」の代助は略奪愛を実現(三千代を平岡から奪う)。「それから」のそれからとして、代助と三千代の2人の様子が「門」で宗助と御米に名前を変えて引き継がれ、ハッピーエンドに終わっていないように感じられた。人間関係に常にしこりがありそうで。

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