2025/2/4
血液検査の項目の一つ
Lactate Dehydrogenase(LDH)(=乳酸脱水素酵素)
まれに、LDH1000~2000 U/Lを経験する。重病があることを必ず推測してしまう。決して無視できない。
「LDHはうそをつかない」という格言がある。
臨床現場において、LDHがさまざまな病態の異常を鋭敏に反映することを示した表現らしい。
ちょっと調べてみたが、これと言った具体的な由来を明確に記した文献を見つけることができなかった。
さて、LDHはほぼすべての組織に存在し、細胞障害や組織崩壊が起こると速やかに血中に漏れ出す。そのため、心筋梗塞、肝疾患、腫瘍、血液疾患、感染症など多くの病態で上昇する。
逆に言えば、何らかの異常があればLDHが上昇するため、「異常を見逃さない指標」としての信頼性が高いとされる。
悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫などの血液疾患では、LDHが腫瘍細胞の崩壊や代謝亢進を反映し、予後指標としても使われる。
肺がんや消化器がんなどでも、LDHは腫瘍指標となるため、がん診療においても無視できないマーカーである。
肝障害や溶血性疾患では、(ASTやALTよりも)先にLDHが上昇することがあり、特に溶血の評価に不可欠である。
おおよそ、ALTでは肝臓、ASTでは筋肉および肝臓、CKでは筋肉と、特定の臓器に限られることが多いが、LDHは全身の病態を反映する。
一度上昇すると、その原因を無視できず、精査が必要になるケースが多い。
多くの疾患で異常を示すが、逆に「偽陰性」が少ないため、臨床医が「LDHの上昇を見たら何らかの原因を追求する」という行動をとる習慣が生まれたという。
「LDHはうそをつかない」という表現は、「異常があるときは必ず反応する」という臨床的経験に基づいたものだろう。