医療法人社団 山中胃腸科病院【公式ホームページ】

56歳の夏

 プライマリ・ケア医(総合診療医)を目指してやがて20年。
 活躍できたかどうかは、よくわからない。
 しかし、いい参考情報を思い出した。
 医療崩壊を回避するヒントになるかもしれない。

夕張市の医療 ~縮小が示した未来像~

 財政破綻から十八年。北海道夕張市の医療は、いまも全国の注目を集めている。かつて171床を誇った市立総合病院は、破綻を機にわずか19床の有床診療所へと縮小された。全国が「医療崩壊の象徴」と騒然となったのは記憶に新しい。

 しかし、その後の歩みは単なる失敗談ではない。むしろ夕張は、超高齢社会の医療の在り方を先取りした「実験場」として位置づけるべきだ。病床を大幅に減らした一方で、夕張はプライマリーケアを核に在宅医療と介護を統合した。救急や急性期は広域の基幹病院に託し、地域には暮らしを支える日常医療を残す。結果として、在宅看取りや慢性疾患の継続ケアが地域に根づいた。医療の中心を病院から家庭へ移すモデルが、財政難の中で実現されたのである。

 もちろん課題は少なくない。冬季の搬送リスク、人材不足、財政の脆弱さは今も続く。だが夕張の経験が示したのは、病院の規模やベッド数だけでは医療の持続性を測れないという厳粛な事実である。

 全国の地方都市は、人口減と高齢化の波に直面している。すべての地域が大規模病院を抱えるのは非現実的だ。地域包括ケアを基盤とし、広域搬送体制を組み合わせる。そのうえで、財政と人材の持続性をどう確保するか。夕張が歩んだ道のりは、私たちが避けて通れぬ問いを突きつけている。

 「破綻の町」を特殊例と片付けてはならない。夕張の試練と挑戦を自らの地域に照らし合わせ、持続可能な医療の設計図を描くこと。それこそが、医療崩壊を防ぐ最善の道である。

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