低価値医療・無価値医療って?
患者にほとんど又は全く健康改善効果をもたらさない医療を指すという。
こうした医療を減らすことで、過剰な検査や治療を防ぎ、不要な医療費を抑制し、医療資源(財源や人材)をより有効な医療サービスに振り分けることができる。
しかし、どのような医師が低価値医療・無価値医療を提供する傾向があるのかについては、これまで十分な根拠がなかった。
検査漬けという批判的な意見はよく聞かれた。一方で、検査不足で不幸な転機を辿ったという結果論も時々聞かれた。
知っておきたい「低価値医療」と「無価値医療」― かしこく医療とつきあうために ―
病院に行くと「せっかく来たんだから、検査をしてほしい」「薬をもらわないと安心できない」と思うことはありませんか。私たちの多くは「何かをしてもらうこと=安心」と感じやすいのです。けれども、最近、医療の世界では「低価値医療」「無価値医療」という言葉が注目されています。これは、医療を受ける私たちにとっても無関係ではありません。あまり耳慣れない言葉ですが、ちょっと説明してみましょう。
低価値医療ってなに?
低価値医療とは、「やっても効果がとても小さい医療」のことです。例えば、風邪をひいて病院に行ったときに抗生物質を処方される場合があります。でも、風邪のほとんどはウイルスが原因なので、抗生物質は効きません。むしろ副作用や耐性菌の問題を起こしてしまう可能性があります。つまり、「効かないわけではないけれど、得られる利益よりも害やコストの方が大きい医療」が低価値医療です。
無価値医療ってなに?
無価値医療とは、読んで字のごとく「やっても全く意味がない医療」のことです。例えば、医学的な根拠がない検査や必要のない点滴などがあります。患者さんにとって利益がないばかりか、かえって害を与えることもあります。
なぜ残ってしまうの?
どうして、こうした医療が現場に残ってしまうのでしょうか。理由はいくつもあります。「安心したい」という患者さんの気持ち、医師の「念のためにやっておこう」という心理、医療制度の仕組みなど。決して「誰かが悪い」という話ではないのですが、その結果、限られた医療資源が本当に必要な人に届きにくくなってしまうのです。
医療費と私たちの未来
日本は世界一の長寿国です。年々、医療費はふくらんでおり、年間40兆円を超え、今後ますます増えると予想されています。低価値医療や無価値医療を減らすことは、「医療費削減」だけが目的ではありません。むしろ「本当に必要な人に、必要な医療を届ける」ための工夫なのです。
海外の取り組み「Choosing Wisely」
海外では「Choosing Wisely(賢く選ぼう)」というキャンペーンが広がっています。学会や専門家が「やらなくていい医療行為リスト」を発表し、患者と医師が一緒に考える仕組みを作っているのです。日本でも「軽い腰痛でいきなり画像検査はしない」「風邪に抗生物質は出さない」などの提案が始まっています。
患者としてできること
ずばり、医師に質問してみることです。「この検査は私に必要ですか?」とか、「この薬のメリットとデメリットは何ですか?」とか。質問することは決して失礼ではありません。むしろ、医師にとっても患者と一緒に考えるきっかけになります。また、薬や検査をしてもらえなかったときに「手抜きされた」と思うのではなく、「必要のないことを避けてもらった」と受け止める視点も大切です。
生活をより良くする医療へ
医療の目的は「長生き」だけではなく、「より良く生きること」です。余計な検査や治療に時間やお金をかけることより、生活習慣を整えることや安心して過ごせる環境をつくることが、むしろ健康につながる場合も多いのです。無駄な医療を減らすことは、患者の安全を守り、未来の医療制度を持続させるための大切なステップです。
最後に
低価値医療や無価値医療は、少し難しい言葉ですが、要するに「しない方がいい医療」のことです。私たちが医師と一緒に考え、必要な医療を選び取ることが、安心できる医療を守ることにつながります。してもらう」ことに安心を求めるのではなく、「必要なことを選んでもらう」ことに安心を感じられる社会へ。そんな意識の転換が、これからの日本の医療を支えていくのかもしれません。
SDM(シェアード・ディシジョン・メイキング)という、患者さんが自分の治療を選ぶ方法として、協働意思決定というものがあります。 SDMは、患者さんと医療者が協力して治療法を決定するプロセスです。ともに考えていく医療を実現したいものです。










