トリーチャー・コリンズ症候群
5万人に1人の割合で発生する先天性疾患。胎生期に顎骨や頰骨の一部欠損や形成不全が生じる。生後、顔の下半分が小さいまま成長するため気道が狭くなり、口呼吸になりやすく、乳幼児には突然の呼吸停止のおそれがある。耳朶や耳道がないため聴覚障害を伴う場合もあり、骨伝導補聴器が不可欠である。呼吸や嚙み合わせなどの機能改善目的に、成長に合わせて骨移植するなどの形成外科手術を繰り返していく。
最近、四日市医師会の先生より、三重県四日市市出身の山川記代香さん(29)が発刊した「大丈夫、私を生きる。」(集英社)をプレゼントされた。早速、読破した。一読の価値は十分あった。
山川さんが自身の経験を振り返り、まとめた自伝である。幼少期から大学生まで、夏休みなどのたびに手術を受けた。ほとんど頰骨がない小さな顔に合うマスクは、不運にも少ない。ひもを掛ける耳朶がなく、そのために手術で形成した。耳穴は生まれつきなく、カチューシャ型の骨伝導補聴器を使っている。「病気を知ってもらえたら生きやすくなる。そして、他の人たちと同じように悩みを持つ一人だと伝えていけたら」と語る。
学生生活では、好奇の視線を常に意識させられてきた。それでも、病気を知ってもらおうと活動を繰り返した。強い意志を保ちつつ、大学生となり、やがて見事に社会人となった。ただ、社会人生活の初期が大変だったようだ。しかし、皆さんの温かい励ましで立ち直り、障がいを克服して今を生きている。
今は愛知県内で働いているそうだ。実家の周り以外ではマスクをつけて顔を隠す生活をしている。「コロナ禍でマスクが当たり前になったのはありがたかった。それまでは人に会う時、外すタイミングに戸惑っていた」とも語る。
ちなみに、アマゾンで「ワンダー 君は太陽」もこの機会に鑑賞した。トリーチャー・コリンズ症候群を知る上で欠かせない映画である。