あの患者
研修医の頃、胸水の高齢患者が入院した。
胸水穿刺試験をしたら、血胸でした。
一応、出血傾向の検査をしていたら、血友病Aと診断するに至りました。
こんな年齢でも血友病があるんだと学んだのですが、そこで後天性血友病Aという病気を知ることになりました。
確か、第Ⅷ因子活性低下で抗第Ⅷ因子(FⅧ)自己抗体(インヒビター)は陰性だったので、後天性血友病Aではなかったと記憶しています。
ちなみに、後天性血友病A(Acquired Hemophilia A)は通常、血友病を持たない成人が突然、抗第Ⅷ凝固因子(FⅧ)自己抗体(インヒビター)を産生し、出血傾向を引き起こす。免疫異常であるので、自己免疫疾患(膠原病など)や悪性腫瘍(がん)などを持病にもつ患者が多いことも分かっている。
免疫反応を抑えるための免疫抑制療法を行うのが一般的。多くはステロイド剤が用いられるが、重症例やステロイド剤使用例は免疫抑制剤が併用されることも少なくない。
令和6年4月に難病指定されたという。後天性血友病A(Acquired Hemophilia A)は、自己免疫性後天性FVIII/8欠乏症と呼称されている。FVIII/8自己抗体(インヒビター)は、免疫抑制療法によりいったんは寛解することが多いが再燃することも少なくない。FVIII/8自己抗体が残存していることもあり、定期的検査を含む長期の経過観察が必要である。死亡率は2~3割と高く、出血死よりも免疫抑制療法中の感染死が多いので厳重な管理が必要である。
医師としての経験を振り返るのは大切である。
医学はいつの間にか進んでいるから。日進月歩。
謙虚に生きよう。不勉強はいけない。