猿神退治に関連して、「霊犬・早太郎伝説」を見つけた。
・・・今から700年も昔、光前寺に早太郎というたいへん強い山犬が飼われておりました。その頃、(現在の静岡県磐田市にあたる)遠州府中見付天神社では田畑が荒らされないようにと、毎年祭りの日に白羽の矢の立てられた家の娘を、生け贄として神様に捧げる人身御供という悲しい習わしがありました。
ある年、村を通りかかった旅の僧である一実坊弁存(いちじつぼうべんぞん)は、「神様がそんな悪いことをするはずがない」と、その正体を見とどけることにしました。
祭りの夜に様子をうかがっていると、大きな怪物が現れ「今宵、この場に居るまいな。早太郎は居るまいな。信州信濃の早太郎。早太郎には知られるな」などと言いながら、娘をさらっていきました。
弁存はすぐさま信州へ向かい、ようやく光前寺の早太郎をさがし当てると、早太郎を借り受けて急ぎ見付村へと帰りました。
次の祭りの日、早太郎が娘の代わりとなって怪物と戦い、それまで村人を苦しめていた怪物(老ヒヒ)を退治しました。
早太郎は化け物との戦いで傷を負いましたが、光前寺までなんとか帰り着くと、和尚さんに怪物退治を知らせるかのように一声高く吠えて息をひきとってしまいました。
(現在、光前寺の本堂の横に早太郎のお墓が祀られています。また、早太郎を借り受けた弁存は、早太郎の供養にと「大般若経」を写経し光前寺へと奉納しました。この経本は現在でも、光前寺の宝として大切に残されています。)
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この昔話から、以下のような教訓を学ぶことができる。
ウソを暴く勇気を持つことの大切さ
猿神という恐ろしい存在に立ち向かう勇気がなければ、村の平和は取り戻せなかった。困難に立ち向かう勇気の重要性が伝わる。
知恵と行動が問題解決の鍵
ただ力だけでなく、知恵を使うことが大切。若者(僧侶)は戦略を考え、冷静に猿神を倒した。これは、問題を解決するためには計画的に行動することが必要だという教訓になる。
人々のために行動することの価値
若者は自分のためではなく、村のために戦った。利他的な行動が社会全体の幸福につながることを示している。
恐怖に立ち向かうことで道が開ける
村人たちは恐れて何もできなかったが、若者が行動を起こすことで事態が変わった。古い考えを捨てて恐れずに行動することで、未来を切り開けるというメッセージが込められている。
昔話には、その時代の人々の知恵や価値観が込められ、勇気・知恵・行動の大切さを伝えている。