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「人間失格」(太宰治著)とジャニーズ性加害問題

「人間失格」の第一の手記に以下の一節(ひとふし)がある。

 けれども自分の本性は、そんなお茶目さんなどとは、凡そ対蹠的なものでした。その頃、既に自分は、女中や下男から、哀しい事を教えられ、犯されていました。幼少の者に対して、そのような事を行うのは、人間の行い得る犯罪の中で最も醜悪で下等で、残酷な犯罪だと、自分はいまでは思っています。しかし、自分は、忍びました。これでまた一つ、人間の特質を見たというような気持さえして、そうして、力無く笑っていました。もし自分に、本当の事を言う習慣がついていたなら、悪びれず、彼等の犯罪を父や母に訴える事が出来たのかも知れませんが、しかし、自分は、その父や母をも全部は理解する事が出来なかったのです。人間に訴える、自分は、その手段には少しも期待できませんでした。父に訴えても、母に訴えても、お巡りに訴えても、政府に訴えても、結局は世渡りに強い人の、世間に通りのいい言いぶんに言いまくられるだけの事では無いかしら。

 ジャニーズ性加害問題を重ねて考えてしまうのは、小生だけであろうか?

 訴える勇気と訴えない勇気。幼少時から、本当の事を言う習慣がついていない?

 さらに、政治家の裏金問題も然り。悪いと言えない人間の深い心の闇。性悪説の典型なのか?

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